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2011-03-19

震災体験(一週間)

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GR DIGITAL + SILKYPIX

未曾有の大震災である。地震・津波により想像を絶する被害を受けた多くの皆様に心よりお見舞い申し上げる。

小生は茨城県東海村の職場で被災した。職場の時計は点灯しているものの14時49分を最後に刻みを止めた。小生に限れば、生命の危険に晒されることは無かった。家族が茨城に戻る予定の前日だったことも幸いした。天に感謝している。

地震発生時はオフィスに居た。揺れが始まり最も激しくなるまでに数秒ないし十数秒あったように記憶している。「お? 地震? 強いな。強いぞ。ヤバイぞ。頭を守れ! 机の下に隠れろ!!」と室内の同僚と互いに声をかけ合い行動する時間的余裕があった。揺れが収まり始めたら「出口確保!」と部屋や建物の扉を開け、点呼しながら皆で外に出た。丈夫な建物で幸いした。

職場は原子力の研究機関で、自身の複数の原子力施設の安全を、施設ごとの部署で分担して確保しなければならない。

小生が働く施設を統括した次長のリーダーシップは非の打ちようのない見事なものだった。その下で同僚たちは迅速に動いた。研究所の中でも最も複雑な大規模な施設だが、その分、堅固な安全設備を備えており、殆ど問題は生じなかった。それでも危機管理は必要となる。

所外からの電力供給は止まったが非常用発電機は起動し、初動はこの非常用電力に支えられた。TVが尋常ではない被害を報じ始めた。津波である。この時、海辺の職場に居る自らの生命がまだ安泰とは限らないことを悟った。同僚を高い階に避難させつつ、屋上の最も高い場所へ上り海を監視すると、明らかに「引き」が見えた。そして「押し」が来て緊張する。これも天の助けである。海岸の形のお陰と思われるが、浜に沿う方向に強い流れができるものの、浜に直角に押し寄せてくる形にならない。もう一度「引き」と「押し」が来るまで1時間半ほど監視を続け、同じ形になることを確認して、ようやく安心した。

ここからは改めて施設の状況確認と処置である。数日以上にわたって外部からの救援は期待できないものと想定して、何ができて、何ができないかを区別し、できないことは諦めるのである。

真っ先に非常用発電機の燃料が尽きることが想定され、非常用発電機の運転続行は早々に放棄する方針となった。それでも大丈夫なように施設を処置する。施設内をくまなく点検したところ、外部から少量ながら湧き水が発見された。これは施設内の廃液タンクに流れ込み、そのうち満水に、その後は施設内が水浸しになる。1時間程度の監視で湧き水量が明らかになり、放置できないとの結論となった。直ちに止水作業が立案・実施され成功。

一般的に言えば、事象の認識と観測、評価と対処、効果の確認の繰り返しとなる。ここで重要なことは、対処するときには効果の確認方法も合わせて立案しなければならない。効果を確認する手段がない場合は、対処しても無駄なのである。そのような対処は放棄すべきで、危機下においてリソースを割くべきではない。

この原則を貫けば、結局、なすべきことは至極単純なものになった。

そして、淡々と時間が流れた。施設はすべての電気的な監視機能を失ったので、24時間当直することとなり、小生も2回夜直についた。

夜の静けさを初めて知った。

最新鋭の研究施設が全ての灯を消され闇に沈んでいる。月光のみが唯一の明かり。海の波と松林を揺らす風の音しかしなかった。

車のラジオを時折ONにして耳を傾ける。福島の原子力発電所の危機を伝えているが、応援の動員は小生にはかからず、傍観者となった。

これは、人智と自然の闘いである。

その趨勢について小生はコメントすることが許されていない。上手く行くことを祈っているとのみ申し上げておく。

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GR DIGITAL + SILKYPIX

借家の拙宅の損害は微々たるもので、多くの被災者の皆さんには申し訳ないほどである。物的な損害は停電で悪くなった冷蔵庫の食料程度である。

今は、小生は自宅待機の身である。

常磐線は土浦まで開通したものの、小生の住む街から東海村までは通じていない。車のガソリンはあと1回職場に出るだけを残すのみだが、補給の目処はまだ無い。18日金曜日、震災後1週間経って初めて近所のスーパーに出かけ、食料事情だけは改善された。

学生時代の友人からお見舞いのメールを頂いている。心から感謝する。海外の研究者仲間からも心のこもったメールを拝領しており、そこには、小生だけではなく、全ての被災者を気遣う言葉が綴られていることをお伝えする。

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