黒部の頂
この日、最も圧倒された光景である。
黒部ダムからの帰路、ロープウェイの下の駅で時間待ちの際に立山を仰ぎ見た。駅舎の屋上は展望台になっており、この風景を望むことができる。雲が頂を覆っていて良く見えない。立山の頂上はさらに奥にもっと高くそびえているのだろうか?
ロープウェイの上の駅も写っているが、このサイズに解像度を落としてしまうとイマイチはっきりしない。険しい斜面に本当に孤立してポツンと駅舎がある。実際には大きな構造物なのだが、この自然の中ではあまりに小さい。しかし、とんでもない場所に人工物を作ったものである。
強い風が吹いていて、母が転ばないか心配だったが、小生が写真を撮っている間に、あっちこっち意外と平気に動き回っていた。
反対側は、黒部ダムを見下ろす方向である。この日、この瞬間だけ、陽が差した。水分をたっぷり含んだ谷の空気に薄っすらと虹がかかった。
そしてすぐ、再び雲が吹き降ろしてきて、世界はモノトーンに戻った。
たっぷり自然を堪能して、ロープウェイに乗って再度山を登る。往路と違って母と2人きりである。正確には、もう1人、車掌さんが居た。山男とは正反対な、失礼ながら、モヤシのように細身の若者だった。
「いえー、毎日山を降りることはしないです。駅舎に泊まります。駅舎の地下に、寮みたいな施設があるんです。」
「いえー、これ、風には結構強いです。風に強くするためにわざと重りを載せます。雷の方が怖いです。」
「いえー、冬も駅舎に居ます。これ、毎日1回は動かさないと凍りつくので。」
とノンビリした口調だが、モヤシの外見からはかけ離れた厳しい勤務振りを吐露してくれた。
上の駅の直前で一旦停止。風が強くて、建物に対してゴンドラが斜めになっている。車掌さんが再び口を開いた。
「あー、これ、ちょっと激しく当たりますね。」
母と顔を見合わせて、とりあえず掴まれるものを握ったとたんに
ガンっ! 「うわっ!!」 (母と小生)
ゴンドラの底部のバンパーを駅舎の漏斗状の導入部にぶつけながら、プラットフォームに滑り込んだ。このロープウェイで2度目のビックリである。
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